建築:麻布台

東京の建築はバブルの狂騒が生んだ建設ブームの遺跡であり、ポストモダニズムの厚い地殻の上を散開する寸断されたジオメトリーの混沌である。このピクセル・シティには意図せずして生まれた数々の傑作やメンフィス・ミラノのカタログからそのまま飛び出したかのような奇抜な輝きが溢れているが、中でも麻布台にそびえる神秘的な正門はその最たるものだ。

東京タワーのオレンジ色を傍目に、ディズニー・チャンネルと同じ建物にある期待外れに没個性的なフリーメーソン東京本部を通り過ぎた先に、まるで「2001年宇宙の旅」のモノリスのようなノアビルディングの姿がある。1974年に竣工されたこのタワーは、かつてベルリン大学で哲学を学び、多くの謎と神秘を湛え、しかし惜しくも広く知られてはいないヒューマニスト建築家・白井晟一の数少ない具現化されたプロジェクトのひとつである。そこから通りの反対側へ向かえば、謙虚な佇まいで折り重なる建物群の中に霊友会釈迦殿というもうひとつの風変りな建築が潜んでいる。ノアビルディングのちょうど一年後に建てられたこの角張った鉄と花崗岩の構造物は、ノアビルディングを陰陽の陽とすれば、陰としての対をなすものだ。まるで「デューン/砂の惑星」に出てくるようなこの世のものならざる外観に加え、この右派新宗教の教団本拠地は目に触れぬ地下に有事に備え400トンの貯水を行っているとも言われている。

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