サイ・トゥオンブリー:紙の作品、50 年の軌跡

サイ・トゥオンブリーについて常に想起される言葉は「私性」である。トゥオンブリーは私生活を公にはせず、限られた人々とのみ親しく付き合い、作品について自ら語ることはほとんどなかった。トゥオンブリーはむしろ遅まきに評価された作家だったが、当人はそれを気に掛ける様子もなく、Vogue誌に掲載されたP.ホルストによる有名なポートレイトには多くの美術品と骨董品に囲まれて幸せそうに過ごす姿が写されている。その写真で注意を引かれるのは、自宅にしては不自然なほど大量に彼自身の作品が見受けられることだ。トゥオンブリーが自ら度々引用する歴史的文脈の中に自作を位置づけることを大いに楽しんでいるのは明らかである。このことはトゥオンブリーを彼のブラックマウンテンカレッジの同胞たちとの比較において論じてきた評論家たちが長く捉えかねてきたものだろう。

紙の作品を集めた原美術館でのトゥオンブリー展についてなによりも言及すべきは、日本での初の大規模な個展ということではなく、その場に漂う私秘的な雰囲気である。かつて私邸であった等身大の空間、柔らかな光、そして目の端に時折飛び込んでくる屋外の緑という環境は、絵の具よりも鉛筆を好み自身の絵画を「アイデアの融合、感覚の融合、場の雰囲気に投影された融合[現象]」とするトゥオンブリーの作品により一層の魅力を与えている。この展示のキュレーターでありトゥオンブリーの親しい友人の一人でもあるS.ジュリーは「トゥオンブリー本人もきっと気に入るはず」と展示の印象を語っている。およそ考えうる、最高の賛辞だと言えるだろう。展示は8月31日まで開催。

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