荒木経惟:左眼ノ恋

まさしく荒木経惟ならではというイメージ、彼が度々試みているペインティング的な実験、そして、生きることそのものがアートだという彼の包み隠さぬ姿勢―それらが自然体で混ざり合ったものが荒木経惟の最新作「左眼ノ恋」だ。この作品のタイトルは、荒木が若い頃に刺激を受けたエド・ファン・デア・エルスケンの1954年の写真作品集『セーヌ左岸の恋』への賛意を示すものであると同時に、荒木の現在のヴィジョンを文字通り象徴するものでもある。なぜなら、ほとんど一年にもわたり、荒木の右目は網膜中心動脈閉塞症のために実際に視界を奪われているからだ。

このような逆境において活動を諦めるアーティストもいることだろう。しかし、荒木経惟はそうではない。彼はただ自分自身に正直に、いつも通り撮影に行き、スライドの右半分をマーカーで黒く塗り潰し、写真をプリントする。嘘偽りなく、美しく、観る者の心を鷲掴みにする「左眼ノ恋」は、今日に至る荒木の足跡の中でも最も力強く私秘的な作品のひとつである。

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